「BTCfi(ビットコイン・ファイナンス)」は、Bitcoinを担保・原資産にしたDeFiエコシステム全般を指すナラティブです。2024〜2025年に最も注目された暗号資産テーマの1つで、TVLは一時90億ドル超に達しました。Babylon・Stacks・CoreDAOといった代表的プロトコルが牽引し、BTC保有者に「ホールド以外の選択肢」をもたらしています。本記事ではBTCfiの全体像・主要プロトコル・最新動向と課題を整理します。
BTCfiとは
BTCfi(Bitcoin Finance または Bitcoin DeFi)は、Bitcoinを使った金融プリミティブ(ステーキング・レンディング・スワップ・利回り生成)を提供するエコシステム全般を指します。Ethereum中心だったDeFiから、Bitcoinエコシステムへ拡張するナラティブとして2024年に本格的に立ち上がりました。
BTCfiが成立した背景には、Bitcoinエコシステムの3つの変化があります。
- OrdinalsとBRC-20:Bitcoinチェーンに任意データを刻む手法が普及し、トークン発行が可能に。
- L2インフラの成熟:Stacks、Rootstock、Babylon、Bitlayer、Merlin等のL2が整備された。
- 機関のBTC需要:spot BTC ETFが資金流入し、BTCが「準備資産」として正統化された。
主要プロトコル
Babylon — ネイティブBTCステーキング
BTCfiセクター最大規模のTVLを持つプロトコル。Bitcoinチェーン上にBTCを残したままUTXOベースでステーキングし、PoSチェーンの安全性に貢献できる仕組み。2024年末にTVL約56億ドルでピークを記録、2025年4月にBABYトークンとBabylon Genesisメインネットをローンチ。
Stacks — 最古参のBitcoin L2
Bitcoinの安全性を引き継ぐPoX(Proof of Transfer)コンセンサスを採用した独自のスマートコントラクトL1/L2。Sovryn、ALEXといったBitcoin DeFiプロトコルが構築されています。2024年のNakamoto Releaseでブロックタイム短縮、sBTC(信頼前提を低めたBitcoin pegged asset)の準備など、機能拡張が進行中。
CoreDAO — Dual Staking
Bitcoinマイナーのハッシュレートを担保にしたPoSコンセンサスを持つEVM互換チェーン。「Non-Custodial Bitcoin Staking」を提供しており、BTCを移動させずにステーキング報酬を得られる設計です。機関向けプロダクトの整備が進行。
BoB / Bitlayer / Merlin など新興BTC L2
EVM互換のBitcoin L2群。Ethereum DeFiプロトコルがほぼそのままデプロイできるため、UniswapやAave風プロダクトがBTC建てで利用可能に。「BTCを使ったDeFi体験」を最も早く実現するアプローチで、2024年に急成長しました。
TVLの推移と現状
- 2024年Q3:BTCfiが「最ホットなナラティブ」として注目を集める。TVLが急増。
- 2024年Q4:Babylon主導でセクター全体のTVLが拡大。
- 2025年10月:BTCfiセクター全体のTVLが約91億ドルでピーク。VC資金は3,200万件・1.75億ドルが32件のディールに投じられた。
- 2026年Q1:BTCfi Layer 2サイドチェーンのTVLが74%収縮、エコシステム全体でも約10%減(101,721 BTC → 91,332 BTC)。
- 2026年5月:Babylonが約40億ドルで最大シェアを維持、Bitcoinナラティブの中で生き残っている形。
BTCfiが直面する課題
- Bitcoin保守派からの抵抗:「BitcoinはDeFiに使うものではない」という根強い思想があり、エコシステム全体の正統性議論が継続。
- UX分断:複数のL2、ラップトークン、ブリッジが乱立し、初心者には極めて分かりにくい。
- セキュリティ前提のばらつき:プロトコル間でBitcoinとの結びつきの強度が異なり、「ネイティブBTC」と謳う商品がそうではない場合もある。
- BTC ETF経由のシンプル需要:機関投資家にとっては「BTC ETFを買うだけ」が最も簡単で、BTCfiの複雑な仕組みに乗る動機が弱い。
- TVL縮小と利回り低下:2025〜2026年のTVL縮小により、ステーキングAPRが当初予想より低くなった。
BTCfiが今後伸びる条件
- 機関向けカストディの整備:HexTrust等の対応で機関BTC保有者がステーキングに乗りやすくなる。
- マルチステーキングの拡大:Babylonのマルチステーキングで「1BTCで複数チェーンをセキュア」が広がれば、報酬の多重化が可能に。
- BSN(Bitcoin Secured Network)の質と量:BTCのセキュリティを借りたいPoSチェーンが増えれば、Babylonエコシステムの需要が増える。
- L2のUX統合:「どのL2にどう資金を移すか」の判断がエンドユーザーに見えるレベルまで簡素化される必要。
- 規制クリア:米国Strategic Bitcoin Reserveのような制度的支持と並んで、BTC関連の利回り商品が「証券か否か」の論点を整理することが重要。
まとめ
BTCfiは「Bitcoinをホールドする以外の選択肢」を提供する大規模なナラティブとして、2024〜2025年に急成長しました。Babylon・Stacks・CoreDAOを中心に独自の経済圏が形成され、TVLは一時90億ドルを突破。2026年にかけてTVL縮小が見られるものの、機関向け対応・マルチステーキング・BSN拡大などの構造的成長要素は残っており、Bitcoinエコシステムの一翼を担うセクターとして今後も注視に値します。