「Movement Labs(ムーブメント・ラボ)」は、Move言語をベースにしたEthereum L2を構築するプロジェクトです。2025年3月にメインネットベータをローンチし、Sui Move・Aptos Move・EVMの3つを同時にサポートする独自仮想マシン「MoveVM」を採用しているのが特徴。MOVEトークンの大型エアドロップ、Celestia採用の話題などで注目を集めました。本記事ではMovement Labsの全体像・特徴・MOVEトークン・直近の論点を整理します。
Movement Labsとは
Movement Labsは、Move言語(Diem/Libraに由来し、AptosとSuiが採用するスマートコントラクト言語)をEthereumエコシステムに持ち込むことを目的としたインフラ企業です。「Move-based modular L2」というポジショニングで、Aptos・Suiユーザー、EVMユーザー、双方を取り込もうとしています。
2024年に大規模なシードラウンドで4,100万ドルを調達し、2025年3月10日に「M2」のメインネットベータを公開。M2はEthereum上で稼働する初のMove VM L2として注目されました。
M2の特徴
マルチVMサポート
M2は独自の仮想マシン「MoveVM」を採用しており、以下を同一チェーン上で実行可能です。
- Sui Move:Sui上のスマートコントラクトをほぼそのまま移植可能。
- Aptos Move:Aptos上のスマートコントラクトも対応。
- MEVM(Move EVM):Move VM内に組み込まれたEVMインタプリタ。EVMコードもMoveから呼び出せる。
これにより「同じL2上でSui Move・Aptos Move・EVMが相互運用できる」という、技術的にユニークな環境が実現しています。
Celestiaをデータ可用性に採用
EthereumをL1、Celestiaをデータ可用性レイヤーとして使うモジュラー構成です。ロールアップとしてEthereumのセキュリティを継承しつつ、データコストはCelestiaに分散することでコスト効率を高めます。Pectra後のEthereum Blob拡張とは別系統で、データ層のコスト最適化に取り組んでいます。
並列処理によるスループット
Move VMの並列トランザクション処理を活かし、理論最大160,000 TPSという高いスループットを謳います。EVMチェーンが通常数百TPSであることを考えると桁違いの設計で、ゲーム・SNSなどスループット重視のアプリ向けインフラを目指しています。
MOVEトークン
MOVEはMovement Labsのネイティブトークンで、2024年12月にトークン生成イベント(TGE)が行われました。総供給量は100億MOVEで、用途は以下の通り。
- Attestantのステーキング:トランザクションのファイナリティを保証する「Attestant」がMOVEをステーキング。
- ガス支払い:M2上のトランザクション手数料。
- ガバナンス:プロトコル変更への投票権。
TGE時の大規模エアドロップは10%(10億MOVE、TGE時価で8億ドル超)に達し、配布規模としては2024年最大級でした。受給者は「Movement L2でクレームすると1.25倍の倍率がかかる」というインセンティブ設計があり、L2のオンボーディング誘導に活用されました。
直近の論点と論争
マーケットメイカー問題(2025年)
TGE後、Movement財団が締結した第三者のマーケットメイキング契約をめぐり議論が起き、トークン分配と価格安定化に関する透明性についてコミュニティから疑問の声が上がりました。チームは契約の見直しと内部監査を実施し、透明性レポートの公開で対応しました。
OFT規格への移行(2026年2月)
2026年2月20日に、MOVEトークンをLayerZeroのOFT(Omnichain Fungible Token)規格にアップグレードするため、Movement Bridgeが一時停止。22日に再開しました。これにより、複数チェーン間のMOVEの移動が標準化され、流動性の分断が緩和されています。
市場価格の調整
TGE時の高値からMOVEは大幅に下落しており、これは2024〜2025年に「大規模エアドロップ → 受給者売り → 価格下落」を経験した類似プロジェクト(ZRO、ENA、JUP等)と同様のパターンです。プロジェクトのファンダメンタルとトークン価格の乖離が市場の論点になっています。
エコシステム状況
- DEX:Move DEX、Mosaic、Canonicaなど。Move言語に特化したDeFiアプリが順次展開中。
- レンディング:Echelon、Aries等。
- NFT:Move-native NFTマーケットも準備中。
- クロスチェーン:LayerZeroによりEthereum・他のL1/L2と接続。
- EVM互換ブリッジ:MEVMにより、既存EVMアプリの移植が比較的容易。
将来展望
Movement Labsの強みは、Move言語の堅牢な型システム(リソース指向設計)をEVMエコシステムに持ち込めるという技術的アービトラージにあります。一方で、AptosやSuiといった単独L1のMove採用チェーンが既に存在しており、「なぜMovement M2なのか」を市場に説明し続ける必要があります。
Pectra以降のEthereum L2エコシステムは飽和気味で、新規L2が際立った差別化要因を出すのは難しい時代に入っています。Movementは「Move VM × EVM互換」というユニークなポジショニングで生き残れるか、それともAptos/SuiとEVMの間で埋もれてしまうのか、2026年後半が試金石となります。
まとめ
Movement LabsのM2は「Ethereum L2+Move VM+EVM互換」という技術的に野心的な組み合わせを実現したプロジェクトです。MoveVMによるマルチVM、Celestiaとのモジュラー構成、Move言語のリソース指向設計など、技術トレンドの交差点に位置しています。一方でTGE後のトークン価格調整・マーケットメイク論争などビジネス面の課題も抱えており、今後の運営透明性とエコシステム成長が成否を分けるでしょう。