2026年2月末から3月初頭にかけて、日本の暗号資産市場で「SANAE TOKEN(サナエトークン)」をめぐる騒動が起きた。高市早苗首相の名前と肖像を使用したSolana上のミームコインが発行され急騰した後、首相本人の否定声明によって急落。さらに金融庁が調査に乗り出すという前例のない事態に発展した。
SANAE TOKENの概要
| 正式名称 | SANAE TOKEN(サナエトークン) |
| ティッカー | SANAET |
| ブロックチェーン | Solana |
| 発行日 | 2026年2月25日頃 |
| 発行主体 | NoBorder DAO(松井健氏ほか) |
| 最高時価総額 | 約2,772万ドル |
発行の経緯と関係者
SANAE TOKENはWeb3コミュニティ「NoBorder DAO」が発行した。株式会社neuの松井健氏が実務を担い、「Japan is Back」プロジェクトの公式インセンティブトークンと位置づけられた。ホームページには高市早苗首相の名前と肖像が使用され、「首相公認」とも取れる演出がなされていた。
発行発表後、溝口勇児氏が運営するコミュニティ「REAL VALUE」内で「高市さんサイドとはコミュニケーションをとらせていただいて」と発言。堀江貴文氏や三崎優太氏といった著名起業家、有名教授らも言及したことで、政府との関係を示唆するナラティブが急速に広がった。
価格急騰から暴落までの経緯
「首相公認」との誤解が市場に広がると、SANAE TOKENは初値から約30倍まで急騰し、時価総額は一時2,772万ドルを記録した。しかしオンチェーンデータでは上位3ウォレットが総供給量の約60%を保有、流動性は40万ドル未満という脆弱な構造が後に明らかになった。
2026年3月2日、高市早苗首相はXに「名前のせいか、色々な誤解があるようですが、このトークンについては、私は全く存じ上げません」と投稿。この声明発表後4時間以内に価格は50%以上下落し、最高値からの下落率は約75%に達した。
金融庁の対応と法的問題
日本では暗号資産の売買・交換を行う業者に金融庁への登録が義務づけられているが(資金決済法)、NoBorder DAOは登録済み事業者28社に含まれておらず、無登録営業の疑いが浮上した。金融庁は実態把握に乗り出し、無登録営業と認定された場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科される可能性がある。
また、現職首相の肖像・氏名を無断使用した点についても、不正競争防止法や公職選挙法などの観点から問題が指摘されている。NoBorder DAOは3月4日に「SANAE TOKENに関するお詫びと今後の対応について」と題した声明を発表し、スナップショット時点の保有者への補償対応を表明した。
この事件が示すもの
SANAE TOKEN事件は、日本の暗号資産市場における複数の構造問題を浮き彫りにした。第一に、政治家の名前を使ったナラティブが投機マネーを引き寄せやすいこと。第二に、インフルエンサーによる「関係者との接触」示唆が価格操作的な効果を持ちうること。第三に、ミームコインの流動性の薄さが急落リスクを高めること——これらは今後の類似事案を判断する際の重要な基準となる。