Nayib Bukele(ナジブ・ブケレ) は、中央アメリカの国 El Salvador(エルサルバドル)の大統領。彼は「国をまるごとビットコイン国家にする」という大胆な政策を進めたことで、世界のクリプト界隈で非常に注目を集める人物です。一方で、その手法や政策の急進性、政治手法には国内外で賛否両論があります。
以下、彼のプロフィールや主な政策・論点をまとめます。
1. 経歴と政治的立場
- Bukele は 2019年にエルサルバドルの大統領に就任。彼はそれまで地方自治体の市長などを歴任していたが、「既存政治への不満」や「汚職」「ギャング暴力対策」を掲げて新しい政治を標ぼう。Encyclopedia Britannica+1
- 就任以降、彼の政党および与党系議会は強い議会多数を確保し、司法制度の変更などを含めた強権的な政治手法を取ることが多く、これに懸念を示す人々もいる。Encyclopedia Britannica+2ウィキペディア+2
- 国内での支持率は高く、2024年にも再選を果たしている。Bitcoin News+1
2. ビットコイン導入:世界初の法定通貨化
・ビットコイン合法化の決断
2021年6月、Bukele は国会へ法案を提出し、暗号資産 Bitcoin(BTC)を法定通貨とすることを提案。3日後に承認され、2021年9月7日から BTC がドルと並ぶ法定通貨として導入された。これは世界で初めての国家レベルでの取り組みだった。ウィキペディア+2Al Jazeera+2
・目的として掲げられた理念
彼はこの措置について、「金融包摂(銀行口座を持たない人口が多い国民に金融のアクセスを与えること)」「雇用創出」「送金コスト削減」などを目的に挙げた。Al Jazeera+2BeInCrypto+2
・国家によるビットコイン購入
BTCを法定通貨にするだけでなく、国家としてビットコインを購入・準備資産として保有する方針もとった。導入直前には最初の 200 BTC を購入したと発表。ウィキペディア+2ZDNET Japan+2
その後も断続的に購入を続け、2025年11月には大幅な買い増し(1090 BTC)を行い、保有量を増やしている。Bloomberg.com
3. “クリプト大統領”としての挑戦と構想
- ビットコインを法定通貨にしたことだけでなく、BTC関連での大きな構想をいくつも打ち出してきた。代表的なものが、火山の地熱エネルギーを活かすという構想の Bitcoin City。税制優遇やCO₂排出ゼロを謳った“ビットコイン経済圏”の構築が目指された。ウィキペディア+2ウィキペディア+2
- また、BTC普及のために政府公式ウォレットアプリを通じた報奨や制度整備、国内外のクリプト企業誘致にも取り組んでいる点で、単なる象徴政策にとどまらない野心を持っていた。ZDNET Japan+2BeInCrypto+2
4. 成果と批判・課題
成果・支持を得た点
- 国内のギャング撲滅や治安改善を評価する層からは強い支持を得ており、支持率は高い水準にある。Encyclopedia Britannica+2ウィキペディア+2
- ビットコイン導入は、クリプト界隈および国際メディアにおいて“実験国家”として大きな注目を集め、エルサルバドルの国際的なプレゼンスを高めた。
- BTC価格が回復したタイミングでは、国家のビットコイン投資が“損失回避あるいは利益確保”と語られることもあった。ウィキペディア+2ウィキペディア+2
批判と問題点
- BTCを国の準備資産にすることで、為替・価格変動リスクを国全体が背負う構造となり、経済の不安定性が懸念された。実際、一部経済専門家からは「世界で最も債務の苦しい国の一つになった」という厳しい評価もあった。ウィキペディア+2infobae+2
- 法定通貨化後も、国民の実際のビットコイン使用率は低く、ドル建て送金や消費が依然として主流という報告がある。たとえば 2024年には、送金におけるビットコイン使用率は僅か約 1.1% と報じられた。Iolite
- “Bitcoin City” や大規模なクリプト経済圏の構想は、環境問題、インフラ整備、法整備、資金透明性といった多くの実務上のハードルに直面。批判が多い。ウィキペディア+2infobae+2
- また、政治手法として強権的な改革や司法への影響、ギャング対策のための非常事態宣言などにより、人権や民主主義への懸念を表明する国際的な声も強い。Encyclopedia Britannica+2ウィキペディア+2
5. なぜ Bukele はクリプト界で注目され続けるのか
- 「国家レベルでのビットコイン実験」を具現化した先駆者
— 単なる理論ではなく、法制化・国家資産化・社会政策としての導入を果たした。 - 政策の大胆さとストーリーテリング力
— “Bitcoin City”“ビットコイン国家”というビジョン、SNSを使った情報発信、若年層へのアピールなど、クリプト文化との親和性が高い。 - 成功と失敗、その両面を内包するリアルさ
— BTCの急上昇による利益もあれば、実需の低さ、国際的な批判、経済・制度のギャップという問題もある。リアルな実験国家であること。 - 「象徴(シンボル)」としての存在価値
— 単なる国家元首ではなく、「クリプト・ビットコイン支持の顔」「暗号資産の未来をかけた国家の試金石」という象徴性がある。
6. まとめ — Bukele の挑戦は「成功」か、「警告」か
Nayib Bukele は、暗号資産の可能性を国家レベルに持ち込んだリスクテイカーである。彼の果敢さと大胆な政策は、世界にインパクトを与え、暗号資産を巡る議論の焦点となった。
ただし、そのやり方が普遍的なモデルになるかは別問題だ。結果として、
- 国家財政への負荷
- 実需の乏しさ
- 国際的な信用リスク
- 制度・民主主義の後退の懸念
など、多くの“代償”をはらんでいる。
暗号資産の未来を語るとき、Bukeleのような“挑戦者”の姿勢には学ぶところが多い。一方で、彼の経験は「暗号資産導入の光と影」を如実に示す警告でもある。


