GM文化とは — クリプトコミュニティの挨拶とフレンテックの世界

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暗号資産やWeb3のコミュニティに触れると、毎朝のように「GM」という2文字が飛び交っていることに気づくでしょう。GMとは「Good Morning(おはよう)」の略で、クリプトコミュニティにおける最も象徴的な挨拶です。たった2文字のメッセージに込められた文化的意味は、想像以上に深いものがあります。

GMは単なる挨拶ではありません。それは「私はここにいる」「このコミュニティの一員だ」という帰属意識の表明であり、Web3のオープンでフレンドリーな精神を体現するシンボルです。本記事では、GM文化の起源と広がり、そこから派生したフレンテック(FriendTech)やコミュニティ文化の全体像を解説します。

GM文化の起源 — なぜ「おはよう」が特別なのか

GM文化の正確な起源を特定することは困難ですが、2020年後半から2021年にかけてのNFT・DeFiブームの時期にCrypto Twitterで爆発的に広まったとされています。暗号資産コミュニティは世界中に散らばっており、タイムゾーンもバラバラです。誰かにとっての朝は、別の誰かにとっての夜です。それでも「GM」と投稿する——この行為は、グローバルなコミュニティがひとつにつながっていることの象徴となりました。

GM文化が広まった背景には、暗号資産コミュニティ特有のポジティビティ(前向きさ)があります。市場が暴落している日でも、ハッキング事件が起きた日でも、朝になれば「GM」を投稿する。この儀式的な挨拶は、困難な状況でもコミュニティが結束していることを示すシグナルとして機能しました。

GMに対応する夜の挨拶が「GN(Good Night)」です。GMとGNのセットは、クリプトコミュニティの1日のリズムを形作る文化的慣習となりました。有名インフルエンサーや著名プロジェクトの公式アカウントまでもが日常的にGMを投稿し、何千ものリプライやいいねが集まる光景は、Web3コミュニティの日常風景です。

GMから生まれた派生文化 — WAGMI、NGMI、そしてミーム

GM文化は、クリプトコミュニティにおける多くのスラングや文化的表現の土壌となりました。最も有名なのはWAGMI(We Are All Gonna Make It)です。「私たちはみんなうまくいく」という意味のこのフレーズは、コミュニティの楽観主義と連帯感を表現しています。市場が好調な時に使われることが多く、集団的な高揚感を共有するための合言葉です。

その対義語がNGMI(Not Gonna Make It)で、「うまくいかないだろう」という否定的な予測を表します。自虐的に使われることもあれば、疑わしいプロジェクトや判断に対する警告として使われることもあります。

他にも、「LFG(Let’s F***ing Go)」は興奮や期待を表す掛け声、「Ser」は「Sir」のクリプト版で、丁寧さとユーモアを兼ねた呼びかけ、「Fren」は「Friend」の略で、コミュニティメンバーへの親しみを込めた呼び方です。これらのスラングは、クリプトコミュニティに独自の「言語」を生み出しました。

GM自体もNFTアートのテーマとなりました。「GM」をモチーフにしたNFTコレクションが複数ローンチされ、GMの文字をデザインしたPFP(プロフィール画像)を使うユーザーも現れました。挨拶がアートになり、コレクターズアイテムになるという現象は、クリプト文化の独自性をよく表しています。

フレンテック(friend.tech)— ソーシャルとクリプトの融合

GM文化が象徴する「コミュニティへの帰属意識」を経済的な仕組みに落とし込んだのが、2023年8月にローンチされたfriend.tech(フレンテック)です。Base(Coinbaseが支援するレイヤー2チェーン)上に構築されたこのアプリは、個人の「シェア(Key)」をトークンとして売買できるソーシャルプラットフォームです。

仕組みはシンプルです。各ユーザーは自分の「Key」を発行でき、他のユーザーはそのKeyを購入することで、そのユーザーの限定チャットルームにアクセスできます。Keyの価格はボンディングカーブ(購入者が増えるほど価格が上がる仕組み)で決定されるため、人気のあるユーザーのKeyは高額になります。

friend.techはローンチ直後に爆発的な人気を集め、1日のプロトコル収益がEthereumメインネットを上回る日もありました。暗号資産インフルエンサーやNFTコレクターを中心に利用が広がり、「ソーシャルファイ(SocialFi)」という新しいカテゴリの可能性を示しました。

しかし、friend.techは多くの課題にも直面しました。投機目的の売買が過熱し、インフルエンサーのKey価格が乱高下する事態が頻発しました。また、チャットルームの活用が十分に進まず、「実際のソーシャル体験」よりも「トークンの値上がり期待」が主な動機になっているという批判もありました。2024年にはユーザー数が大幅に減少し、V2のローンチも期待を下回る結果となりました。

クリプトコミュニティ文化の本質

GMやフレンテックの事例から見えてくるのは、クリプトコミュニティ文化の核心にある「帰属意識のトークン化」というテーマです。従来のオンラインコミュニティでは、帰属意識は無形のものでした。しかしWeb3では、NFT、ガバナンストークン、ソーシャルトークンなどを通じて、コミュニティへの参加や貢献を可視化し、経済的な価値と結びつけることが可能になりました。

Discordサーバーにおけるロール(役割)システムも、クリプトコミュニティ文化の重要な要素です。特定のNFTを保有していることで限定チャンネルにアクセスできる「トークンゲーティング」は、デジタル空間における新しい形の会員制度として機能しています。OG(Original Gangster=古参メンバー)であることが一種のステータスとなり、コミュニティ内のヒエラルキーが自然と形成されます。

Twitter Spaces(現X Spaces)もクリプトコミュニティ文化を形作る重要な場です。毎日のように開催される音声チャットでは、市場分析、プロジェクト紹介、AMA(Ask Me Anything)などが行われ、リアルタイムの情報交換と人的ネットワーキングの場となっています。

リアルイベントも欠かせません。世界各地で開催される暗号資産カンファレンス(ETHDenver、Token2049、Devconなど)では、オンラインで「GM」を交わしていた人々がリアルで出会い、さらに深いつながりを築きます。「IRL(In Real Life)ミートアップ」は、デジタルネイティブなコミュニティがフィジカルな体験を通じて結束を強める貴重な機会です。

GMという2文字から始まるクリプトコミュニティ文化は、デジタル時代における人々のつながり方の実験です。匿名のウォレットアドレスの向こうにいる見知らぬ人に「おはよう」と声をかけ、共通の興味でつながり、時にはお金を出し合って行動する。このコミュニティの在り方は、効率的とは言い難い面もありますが、従来のSNSにはない温かさと一体感を持っています。暗号資産やWeb3に興味を持ったら、まずはTwitterで「GM」とツイートしてみてください。きっと多くの「GM」が返ってくるはずです。それが、クリプトコミュニティへの最初の一歩です。