インパーマネントロス(Impermanent Loss)とは

暗号資産(クリプト)業界におけるインパーマネントロス(Impermanent Loss)とは、分散型取引所(DEX)に流動性を提供する際に発生する一時的な損失を指します。
預け入れた2つのトークンの価格が変動することで、流動性提供者(LP)が単純にトークンを保有していた場合と比べて資産価値が目減りしてしまう現象です。
「Impermanent(一時的)」という名前ですが、最終的には確定損失になる可能性もあり、DeFiにおける重要なリスク要因とされています。


詳しい解説

1. インパーマネントロスの仕組み

分散型取引所(DEX)では、ユーザーが自由にトークンを交換(スワップ)できるように、「流動性プール(Liquidity Pool)」が存在します。
このプールには、流動性提供者(Liquidity Provider: LP)が2種類のトークンを一定の比率で預け入れています。
プール内では、トークンAとトークンBの数量の積が常に一定(x×y=k)になるように設計されています。

価格が変動すると、トークン同士の数量比率が自動的に調整され、価格と数量のバランスを保ちます。
この仕組みが、インパーマネントロスを引き起こす原因です。


2. インパーマネントロスが発生する流れ

  1. 流動性提供時
    ユーザーが1 ETH(価格100ドル)と100 USDTをペアとして流動性プールに預ける(合計200ドル分の流動性提供)。
  2. 価格変動
    ETHの価格が200ドルに上昇。プール内のETHは高くなり、交換されやすくなるため、プール内のETHは減少し、USDTは増加。
  3. 流動性解除時
    流動性を解除すると、預け入れ時の比率とは異なり、例えば0.7 ETHと140 USDTが返ってくる。
  4. 損失確認
    もしETHをそのまま持っていれば200ドル分のETHと100ドル分のUSDT(合計300ドル)になるはずだった。
    しかし、プールから戻ってきた資産の合計価値は280ドルに減少。

この差額(300ドル – 280ドル)がインパーマネントロスです。


3. なぜ「一時的」なのか

「Impermanent(一時的)」という言葉が使われるのは、価格が元に戻ればインパーマネントロスも解消されるからです。
ただし、価格が戻らなかった場合や、途中で流動性を引き上げてしまった場合には、その損失は「確定損失(Permanent Loss)」になります。


4. インパーマネントロスの影響要因

インパーマネントロスの大きさには、以下の要因が影響します:

  • 価格変動幅
    2つのトークンの価格差が大きくなればなるほど、インパーマネントロスも大きくなります。
  • トークンペアの選択
    価格が連動しやすいペア(例:ステーブルコイン同士)ではインパーマネントロスはほぼ発生しません。
    逆に、ボラティリティ(価格変動)が大きいペアではインパーマネントロスのリスクも高まります。
  • 流動性提供期間
    価格変動が起こる期間が長いほど、インパーマネントロスが蓄積しやすくなります。

5. インパーマネントロス対策

完全に避けるのは難しいですが、以下の方法でリスクを軽減できます。

  • 安定したペアを選ぶ
    USDC/USDTのようなステーブルコインペアなら価格が安定し、リスクが小さくなります。
  • 価格変動が少ないタイミングを狙う
    相場が安定している時期にLPをすることで、リスクを抑えられます。
  • 取引手数料収入で補う
    高リスクペアでも、スワップ手数料収入が大きければ、インパーマネントロスを相殺できる可能性があります。
  • インパーマネントロス保険を活用
    一部のプロトコルでは、LP向けにインパーマネントロスを補償する仕組みを提供しています。

6. LP(流動性提供)のメリット・デメリットまとめ

項目メリットデメリット
報酬取引手数料収入が得られるインパーマネントロスによる資産減少リスク
価格影響市場価格の安定に貢献ボラティリティが高いと損失リスク増加
流動性貢献DeFiの基盤を支える重要な役割特に価格変動の激しい市場ではリスク管理が必須

まとめ

インパーマネントロスは、流動性提供という「貢献行為」の対価として発生するリスクです。
特に価格変動の激しいペアでは避けられないリスクですが、そのリスクを取引手数料収入やDeFi報酬でカバーできるかがポイントになります。
また、価格連動性の高いペアやステーブルコインペアを選ぶことで、リスクそのものを抑える選択も可能です。

DeFiを活用して資産運用を行う際には、インパーマネントロスを理解し、許容できる範囲かどうかを事前に判断することが重要です。