デジタル人民元(e-CNY)とは

デジタル人民元(e-CNY)は、中国人民銀行(PBOC)によって発行された中央銀行デジタル通貨(CBDC)であり、物理的な人民元をデジタル形式で提供するものです。この通貨は、金融の包摂性を高め、現金流通をデジタル化することで支払いシステムの効率を向上させることを目的としています。

e-CNYの開発と展開

e-CNYの開発は2014年に始まり、2019年にパイロットプログラムが開始されました。これらのパイロットは、中国国内の複数の都市で実施され、小売支払い、銀行間決済、そしてクロスボーダー取引など、実際の利用シナリオでその機能がテストされました。2022年からは、さらに多くの地域でパイロットプログラムが拡大され、2023年の北京冬季オリンピックでも利用されました。

技術的構造と機能

e-CNYは二層構造を採用しており、第一層がPBOC、第二層が商業銀行やWeChat Pay、Alipayなどのデジタル決済サービスプロバイダーによって運営されています。これにより、ユーザーはデジタルウォレットを通じてe-CNYを利用できるようになっており、モバイルアプリを使った簡便な支払いが可能です。

e-CNYはまた、プライバシー保護と取引の追跡をバランスよく設計しており、匿名性の高い小額取引も可能にしていますが、不正行為防止のために必要に応じて取引データの追跡が可能です。

国際的な影響と課題

中国は、e-CNYを国内でのキャッシュレス化推進だけでなく、国際的な決済手段としても展開することを目指しています。特に香港でのクロスボーダー決済など、国際的な利用も視野に入れて試験運用が進められています。しかし、e-CNYの国際展開には、データプライバシーの懸念や他国との規制の違いなどの課題が残されています。

e-CNYは、世界初の大規模な中央銀行デジタル通貨の一つとして、他国のCBDC開発にも大きな影響を与えており、今後の展開が注目されています。