1. 概要
The DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、2016年にイーサリアム(Ethereum)上で構築された世界初の大規模な分散型自律組織(DAO)です。The DAOは、スマートコントラクトを活用し、投資家が直接意思決定を行う新しい形の投資ファンドとして設計されました。
しかし、スマートコントラクトの脆弱性を突かれた大規模なハッキング事件(The DAOハック)が発生し、当時のイーサリアムコミュニティを大きく揺るがしました。
2. The DAOの仕組み
(1) 投資の仕組み
- 投資家はETH(イーサリアム)を送金し、The DAOのトークン(DAOトークン)を受け取る。
- The DAOトークン保有者は、投資プロジェクトの選定・資金配分を投票で決定。
- 透明性が高く、中央管理者を介さない投資モデルとして注目を集めた。
(2) スマートコントラクトの活用
- 資金管理や投票、報酬の配分などをスマートコントラクトで自動実行。
- 従来のファンドマネージャーを排除し、完全にコードベースで運営される設計。
3. The DAOハック事件
(1) ハッキングの経緯
- 2016年6月、The DAOのスマートコントラクトに「再帰的呼び出し攻撃(Reentrancy Attack)」という脆弱性が見つかる。
- 攻撃者は、資金を引き出す際に同じ処理を繰り返し実行し、通常よりも多くのETHを引き出すことに成功。
- 約360万ETH(当時の価値で約50億円相当)が盗まれる。
(2) コミュニティの対応
- イーサリアムの開発者コミュニティは、盗まれた資金を取り戻す方法を議論。
- 最終的に、ハードフォークを実施し、攻撃者のウォレットから資金を凍結する措置が取られる。
- これにより、イーサリアムは2つのチェーンに分岐:
- Ethereum(ETH):ハードフォーク後のメインネット。
- Ethereum Classic(ETC):ハードフォークを拒否し、元のチェーンを維持。
4. The DAO事件の影響
(1) イーサリアムコミュニティの分裂
- The DAOのハッキング事件により、イーサリアムコミュニティは「コードの不可侵性を守るべきか」「不正な取引を巻き戻すべきか」という意見で対立。
- 結果として、ハードフォークによりETHとETCが分裂。
(2) DAOに対する規制の強化
- 2017年、米国証券取引委員会(SEC)はThe DAOを証券として分類し、規制の必要性を指摘。
- これ以降、DAOプロジェクトは規制当局の監視を受けるようになった。
(3) DAOエコシステムの発展
- The DAO事件を教訓に、現在のDAOプロジェクトはセキュリティ監査やスマートコントラクトの改善が進められている。
- MakerDAO、Aave、Curveなど、多くのDAOがDeFi(分散型金融)で活用されている。
5. まとめ
- The DAOは、2016年に誕生した世界初の大規模な分散型自律組織(DAO)。
- スマートコントラクトを利用した投資ファンドとして注目を集めたが、脆弱性を突かれたハッキング事件が発生。
- ハードフォークによりEthereum(ETH)とEthereum Classic(ETC)に分裂。
- The DAO事件をきっかけに、DAOのセキュリティや規制の議論が進む。
The DAOの失敗から学びつつ、現在のDAOエコシステムはより堅牢な構造へと進化しています。