LIBRA(リブラ)は、2025年2月にアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が自身のSNSで推奨したことで世界的な注目を集めた暗号資産プロジェクトです。しかし、発表からわずか数時間で価格が急騰・急落し、多くの投資家が損失を被りました。この事件は「LIBRAスキャンダル」として国際的に報じられ、暗号資産における規制や著名人の責任について大きな議論を巻き起こしました。
ここでは、LIBRAの発端から価格変動の経緯、そしてその後の法的・政治的影響までを詳しく解説します。
プロジェクトの背景と目的
LIBRAは「Viva La Libertad(自由万歳)プロジェクト」の一環として企画されました。公式には、アルゼンチンの中小企業やスタートアップへの投資を促進し、経済成長を支援することを目的として掲げていました。
プロジェクトの運営には、パナマに登録されたKIP Protocolという企業が関与しており、技術的なインフラの提供を担当していました。トークンはSolanaブロックチェーン上で作成され、高速な取引処理と低い手数料を活かしたプロジェクト設計がなされていました。しかし、注目すべき点として、トークン総供給量の70%がプロジェクト創設者によって保有されていたことがあります。この偏った分配構造は、後に価格操作の温床となりました。
価格急騰と暴落の経緯
2025年2月14日18時58分(アルゼンチン時間)にLIBRAトークンが作成され、そのわずか3分後にミレイ大統領が自身の公式SNSアカウントでこの暗号資産を宣伝しました。大統領という公的な立場からの推奨により、多くの投資家が殺到し、LIBRAの価格は0.000001ドルからわずか40分で5.20ドルにまで急騰しました。
しかし、価格がピークに達した直後、創設者が保有していたトークンが大量に売却されました。いわゆる「ラグプル(Rug Pull)」と呼ばれる手法で、価格は85%以上暴落しました。この急激な価格変動により、約74,000人の投資家が影響を受けたと報告されています。一方、創設者側の9つのウォレットは約8,700万ドル(約130億円)の利益を得たとされています。
関係者の対応と責任
スキャンダル発覚後、各関係者はそれぞれ異なる対応を取りました。ミレイ大統領は、宣伝投稿から約7時間後にプロジェクトの詳細を十分に把握せずに情報を共有したことを認め、該当の投稿を削除しました。
KIP Protocolは声明を発表し、自社は技術的インフラを提供しただけであり、プロジェクトの実行や資金管理には関与していないと主張しました。一方、Kelsier社のオーナーで、LIBRAのアドバイザーであったHayden Mark Davis氏は、政府関係者がプロジェクトを支持すると約束していたと主張し、大統領の突然の支持撤回を批判しました。
法的・政治的影響
LIBRAスキャンダルは、アルゼンチン国内外で大きな法的・政治的影響を及ぼしました。アルゼンチン国内では、野党「祖国のための連合(Union for the Homeland)」が大統領の弾劾手続きを開始する意向を表明し、複数の刑事告発が提出されました。
国際的にも波紋が広がり、米国に拠点を置くアルゼンチンの法律事務所が米国司法省とFBIに対して、大統領および関係者を告発する動きを見せました。この事件は、暗号資産分野における規制の必要性と、公的人物がデジタル資産を推奨する際の責任について、改めて国際的な議論を喚起するきっかけとなりました。
まとめ
LIBRAスキャンダルは、一国の大統領が推奨した暗号資産プロジェクトが典型的なラグプルであったという、前例のない事件です。トークン供給の過度な集中、公的人物による安易な推奨、そして規制の不備が重なり、多くの投資家が被害を受けました。この事件は、暗号資産投資において「誰が推奨しているか」ではなく「プロジェクトの構造やトークン分配が健全か」を見極めることの重要性を強く示しています。