各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対する方針

各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対する方針は、国ごとに異なり、開発段階や導入に向けたアプローチも多様です。以下に、主要な国々のCBDCに対する方針と現状をまとめました。

1. 中国(デジタル人民元 e-CNY)

  • 方針: 中国は、世界で最も先進的なCBDCプロジェクトの1つを推進しています。デジタル人民元(e-CNY)は、国内での電子決済の標準化と、国際的な貿易取引での利用を目指しています。
  • 現状: すでに複数の都市で試験運用が行われており、商業銀行やデジタル決済プラットフォームを通じて消費者が利用可能です。国内の交通機関や公共料金の支払いなど、実生活での利用も進んでいます。

2. スウェーデン(e-クローナ)

  • 方針: スウェーデンは、現金利用が世界的に見ても著しく少ない国であり、CBDCの導入によってデジタル経済の安定を図る方針です。
  • 現状: e-クローナは現在、リクスバンク(スウェーデン中央銀行)が試験的なプロジェクトを進めており、技術的な検証や実務的な運用に向けた準備が行われています。

3. ユーロ圏(デジタルユーロ)

  • 方針: 欧州中央銀行(ECB)は、デジタルユーロの導入を検討しており、ユーロ圏内でのデジタル決済の安全性と効率性を高めることを目指しています。また、プライバシー保護と金融安定性を両立させる方針を掲げています。
  • 現状: 2021年から2年間の調査段階に入り、技術的な実現可能性の検証が行われています。2023年以降に導入に向けた決定が下される予定です。

4. アメリカ(デジタルドル)

  • 方針: アメリカはCBDCの導入について慎重な姿勢をとっており、金融システムへの影響やプライバシー、セキュリティの問題を精査しています。目的は、国際通貨としてのドルの地位を維持しつつ、デジタル経済への対応を図ることです。
  • 現状: 連邦準備制度(FRB)は、CBDCに関する研究や議論を続けていますが、具体的な導入時期については未定です。2023年にはCBDCに関するディスカッションペーパーが発表され、社会的な議論が続いています。

5. 日本(デジタル円)

  • 方針: 日本銀行は、デジタル円の導入に向けて慎重に検討を進めています。デジタル円の目的は、決済インフラの強化とキャッシュレス社会の推進です。
  • 現状: 2021年から技術的な検証を開始し、第1フェーズが終了しました。第2フェーズでは、具体的な機能や実務的な課題についての検証が行われています。導入に関する最終決定はまだ下されていません。

6. イギリス(デジタルポンド)

  • 方針: イングランド銀行は、デジタルポンドの可能性を検討中です。CBDCの導入により、国民のデジタル決済環境を整備し、経済全体の効率性を向上させることを目指しています。
  • 現状: 2021年にデジタルポンドの研究プロジェクトが開始され、今後数年間にわたって検討が続けられる予定です。現在は、民間企業や学術機関との協力を通じて、技術的な検討や社会的な影響の評価が行われています。

7. カナダ(デジタルカナダドル)

  • 方針: カナダ銀行は、CBDCの導入に関して前向きな検討を行っていますが、現時点ではまだ導入の必要性が低いと判断されています。しかし、将来的な需要に備えて準備を進めています。
  • 現状: カナダでは、CBDCに関する技術研究や社会的影響の調査が進められていますが、導入はまだ決定されていません。

8. インド(デジタルルピー)

  • 方針: インドは、CBDCの導入によってデジタル決済の推進と金融包摂の拡大を目指しています。インド政府は、デジタルルピーが経済に与える影響を慎重に評価しながら進めています。
  • 現状: インド準備銀行(RBI)は、パイロットプロジェクトを進めており、都市部と地方部での実証実験が計画されています。

まとめ

CBDCは各国で異なる形で開発が進められており、その目的や導入計画は国ごとに異なります。金融インフラの強化、キャッシュレス社会の推進、国際的な競争力の維持など、それぞれの国が抱える課題に応じてCBDCの役割が定義されています。各国は技術的な検証や社会的な影響の評価を慎重に行いながら、CBDCの導入に向けた準備を進めています。