「全ツ」とは、「全ツッパ(ぜんつっぱ)」を略した言葉で、元々は麻雀やパチンコ・パチスロといったギャンブル業界で生まれた用語である。特定の勝負や状況に対して「全力で突っ張る」、すなわち手持ちの資金やリソースをすべて投入するという意味を持つ。特に近年では、この言葉が投資界隈、特に仮想通貨(クリプト)業界にも流入し、「特定の仮想通貨やプロジェクトに資産のすべてを投入する」行為を指すスラングとして用いられている。
語源と歴史
1. 麻雀由来
「全ツッパ」は麻雀用語として誕生したとされる。
リーチがかかっている場面でも、危険牌を恐れず、自分の和了(あがり)を目指して全力で牌を切り続けるという行為を「全ツッパ」と表現した。
2. ギャンブル業界への広がり
その後、パチンコ・パチスロ界隈に言葉が転用される。
持っている資金をすべてつぎ込んで、一度の勝負に賭けるという、より資金面のニュアンスが強い用語として定着した。
3. 投資・クリプト業界への流入
投資界隈や仮想通貨界隈では、特に草コイン(新興アルトコイン)やIDO(Initial DEX Offering)などのハイリスク・ハイリターン案件に対して、手持ち資金の全額を投じる行為として使われるようになった。
SNSや投資系コミュニティで広がり、「全ツ」という言葉がクリプト特有のスラングとしても定着している。
意味と使われ方
1. 原義(ギャンブル)
- 所持金をすべて投入すること
- 一切の余裕資金を残さず、勝負に賭ける大胆な行為
2. 投資・クリプト界隈での使われ方
- ある銘柄やプロジェクトに資産の全額を投入すること
- 特に、未来の爆上げを期待して草コインや新興プロジェクトに全ツする行為が目立つ
- 「全ツします!」とSNSで宣言することで、コミュニティから注目を集めたり、他者の行動を促す目的で使われることもある
具体例
ギャンブル界隈
- パチスロで「今日はこの台に全ツッパするわ」と宣言し、軍資金をすべて使い切る覚悟で一台に座り続ける。
- 麻雀で「オリる気はない、全ツだ」と言い、自分の手に自信を持って勝負に突き進む。
クリプト界隈
- 「次の100倍銘柄はこれだ」と信じ、保有資産すべてをその仮想通貨に投入する。
- 「IDO案件に全ツしました」とSNSで投稿し、他の投資家にも注目させる。
リスクとリターン
メリット
- 選択した対象が成功した場合、一撃で莫大な利益を得る可能性がある。
- 早期参入による大化けのチャンスを掴むことができる。
デメリット
- 失敗した場合、資産の全てを失う(=破産)リスクが極めて高い。
- 情報収集や冷静な判断を欠くと、**詐欺プロジェクト(ラグプル)**に全ツする危険もある。
- 投資の基本である分散投資とは真逆の行為であり、合理的な資産運用とは言い難い。
心理的背景
- FOMO(Fear of Missing Out)
- 他の投資家が大儲けしている情報を目にして「自分も乗り遅れたくない」という強迫観念に駆られる。
- ギャンブル思考
- 「一攫千金」を夢見て、リスクを無視してでも大勝負に挑みたくなる心理。
- コミュニティ文化
- 「全ツしました!」という宣言自体が、SNSや投資コミュニティでのネタ化・承認欲求満たしに繋がる。
全ツに対する評価
肯定的な見解
- 人生を変えるレベルのリターンを狙うには、ある程度のリスクは覚悟するもの。
- 早期BTCやETHへの「全ツ」は、結果として成功者を多数生んだ歴史もある。
否定的な見解
- 再現性が低く、統計的に成功確率は極めて低い。
- 「投機(ギャンブル)」と「投資(リスク管理)」を混同している。
- 破滅への最短コースであり、初心者が真似るべきではない。
全ツにおける心得と対策
- 余剰資金で行う
- 生活費や急な出費に備える資金は絶対に守る。
- 失っても構わない範囲内で行う。
- 情報収集を徹底
- プロジェクトのホワイトペーパー、運営チーム、トークノミクスを徹底調査。
- Twitter、Discord、Telegramでリアルな情報を集める。
- 冷静な撤退判断
- 損切りラインや利確ラインを事前に設定。
- 「期待してるから」とズルズル保有するのは破滅の元。
まとめ
「全ツ」は、麻雀→パチンコ・パチスロ→投資・クリプトと進化してきたスラングであり、その根底には「一か八かの大勝負に出る」という共通した精神がある。
成功すれば英雄、失敗すれば破滅という非常にリスキーな行為であり、常に自己責任と冷静な判断が求められる。