暗号資産(クリプト)業界における「デリゲート(Delegate)」とは、主に以下の2つの文脈で使用されます。
- DAO(分散型自律組織)における投票権の委任:ガバナンストークンの保有者が、自身の投票権や提案権を信頼する個人や組織に委任すること。これにより、専門知識を持つデリゲートが代わりに提案や投票を行い、DAOの運営効率や意思決定の質を向上させます。
- ステーキングにおける権利の委任:特定のコンセンサスアルゴリズム(例:DPoS)を採用するブロックチェーンにおいて、トークン保有者が自身の保有トークンを他者(バリデーター)に委任し、ブロック生成や取引承認の権利を委託すること。これにより、委任者は報酬の一部を受け取ることができます。
詳細な解説
1. DAOにおけるデリゲート
DAOは、ガバナンストークンを通じて組織の運営や意思決定を行う分散型の組織体です。しかし、全てのトークン保有者が積極的に投票や提案に参加するとは限らず、投票率の低下や意思決定の停滞が課題となることがあります。
この問題を解決するために、デリゲートの仕組みが導入されています。トークン保有者は、自身の投票権や提案権を信頼するデリゲート(個人や組織)に委任し、デリゲートが代わりに議論への参加、提案の作成、投票の実施などを行います。これにより、専門知識や経験を持つデリゲートがDAOの運営をサポートし、組織の効率性や意思決定の質を向上させることが期待されます。
例えば、dYdXのDAOでは、世界各地の大学のWeb3組織がデリゲートとして参加しており、専門的な知識を活かしてDAOの運営に貢献しています。
2. ステーキングにおけるデリゲート
一部のブロックチェーンネットワークでは、コンセンサスアルゴリズムとして「デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(DPoS)」を採用しています。この仕組みでは、トークン保有者が自身のトークンを特定のバリデーター(検証者)に委任(デリゲート)し、バリデーターがブロック生成や取引の検証を行います。
トークンをデリゲートすることで、委任者はバリデーターが得た報酬の一部を受け取ることができます。これにより、トークン保有者は自らが直接ブロック生成や検証を行う負担を負うことなく、ネットワークの運営に参加し、報酬を得ることが可能となります。
例えば、Tezos(テゾス)ブロックチェーンでは、トークン保有者がベイキング(ブロック生成)の権利をデリゲートサービスに委任することで、間接的にネットワークの運営に参加し、報酬を得ることができます。
まとめ
デリゲートの概念は、暗号資産業界において、ガバナンスやネットワーク運営の効率化、専門性の活用、参加者のインセンティブ向上など、多岐にわたる役割を果たしています。適切なデリゲートの活用により、分散型組織やネットワークの健全な発展が促進されると期待されています。