ATR(平均真のレンジ)は、市場のボラティリティ(価格の変動幅)を測定するためのテクニカル指標です。損切りや利食いの設定、トレードのポジションサイズを決定する際に、重要な指標として広く利用されています。
1. ATRとは?
- ATRは、一定期間(デフォルトでは14期間)の「真のレンジ(True Range)」の平均値を計算したもの。
- 真のレンジ(True Range)は次の3つの値の中で最大のもの:
- 当日高値 – 当日安値
- 前日終値 – 当日高値
- 前日終値 – 当日安値
2. ATRの特徴
- 値が大きいほど、ボラティリティが高い(価格変動が大きい)。
- 値が小さいほど、ボラティリティが低い(価格変動が小さい)。
3. ATRの利用方法
a. 損切り(ストップロス)の設定
- ATRを使って適切な損切り幅を設定できます。
- 通常、1ATR〜2ATRの範囲で損切りを設定することで、市場のノイズ(小さな変動)による早すぎる損切りを回避します。
例
- 現在のATR値が0.02(2%)で、価格が100 USDTの場合:
- 損切り幅 = 1×ATR=0.02×100=21 \times \text{ATR} = 0.02 \times 100 = 21×ATR=0.02×100=2 USDT
- 損切りライン = 98 USDT
b. 利食い(テイクプロフィット)の設定
- ATRを基に現実的な利食い目標を設定。
- リスクリワード比を考慮し、利食い幅を1.5×ATR1.5 \times \text{ATR}1.5×ATR、2×ATR2 \times \text{ATR}2×ATRなどに設定することが一般的。
例
- 損切り幅を1ATR(2 USDT)とした場合:
- 利食い幅 = 2×ATR=2×2=42 \times \text{ATR} = 2 \times 2 = 42×ATR=2×2=4 USDT
- 利食いライン = 104 USDT
c. ボラティリティに応じたポジションサイズの決定
- ボラティリティが高いときはリスクが増大するため、ポジションサイズを小さくします。
- ポジションサイズの計算式: ポジションサイズ=リスク許容額ATR×資産価格\text{ポジションサイズ} = \frac{\text{リスク許容額}}{\text{ATR} \times \text{資産価格}}ポジションサイズ=ATR×資産価格リスク許容額
例
- 口座残高 = 1000 USDT
- 許容リスク = 残高の1% = 10 USDT
- 資産価格 = 100 USDT、ATR = 0.02(2%): ポジションサイズ=100.02×100=5 units\text{ポジションサイズ} = \frac{10}{0.02 \times 100} = 5 \, \text{units}ポジションサイズ=0.02×10010=5units
d. トレードのフィルターとして使用
- ATRが高いとき(ボラティリティが高い):トレンドフォロー戦略が有効。
- ATRが低いとき(ボラティリティが低い):レンジ相場を狙った逆張り戦略が有効。
4. ATRを使う際の注意点
- ATRは方向性を示さない:
- ボラティリティのみを測定するため、価格が上昇するのか下落するのかはわかりません。
- 他の指標と組み合わせる:
- RSIや移動平均線など、トレンドやオシレーター指標と併用して精度を高める。
- 市場環境に応じてパラメータを調整:
- デフォルトの14期間を使用することが多いですが、短期トレードでは5期間、長期トレードでは20期間を検討することもあります。
5. 結論
ATRを使うことで、市場のボラティリティを考慮した合理的な損切り・利食いラインの設定やポジションサイズ管理が可能になります。これにより、価格のランダムなノイズによる早すぎる損切りや、過剰なリスクを回避できます。